オファーの段階で誰の名前が挙がっていたのかや、起用された俳優が第何希望だったのかは基本表沙汰にならないものですが、今回紹介するように代役として起用された作品が大ヒットしたり評価を得て代表作となったという話はよくあることです。
もちろん、代役として起用されなくても実力がある方なら他の作品で注目されるかもしれませんが、たまたま代役で起用された作品が当たるというのはやっぱり話題となりますよね!
そんなわけで今回は、代役として起用された作品がヒットした俳優と、本来オファーしていた俳優について紹介します。
オム・ギジュンさんはミュージカル出身の俳優です。
1995年に舞台デビューし、以降数々のミュージカルで主演を務めミュージカル界のトップスターとなりました。
ドラマには脇役として2006年頃から出演しはじめ、「ファントム」「ゴールデンクロス」「被告人」といった作品で演じた悪役で人気となります。
それと並行して、広く認知されることとなった「ドリームハイ」ではペ・ヨンジュンさんやJ.Y. Parkことパク・ジニョンさんとも絡む人の良い教師役、「ロボットじゃない」では元カノそっくりのロボットを開発した天才博士という変わった役も演じており、幅広い役柄を演じられる実力派俳優として知られています。
近年は、裏の顔を持つ野心家の弁護士役を演じた「シスターズ」や、集められた7人の悪人たちを断罪する謎めいた人物を演じた「7人の脱出」など悪人役が定着しています。
その中でも特に話題となったのが、“韓国マクチャンドラマ史上最低と言われる悪役”チュ・ダンテ役を演じた「ペントハウス」シリーズです!
このチュ・ダンテというキャラクターは、超高級マンション・ヘラパレスを手掛けた建築会社の代表であり、自ら最上階のペントハウスに住んでいます。
妻に暴力を振るい浮気もする冷徹な男でありながら外では理想の夫を演じている人物で、その行き過ぎた悪役ぶりにより嫌われたどころか“歴史的悪役”として高い人気を獲得しました。
そんなチュ・ダンテ役を演じたオム・ギジュンさんですが、実はこの役を最初にオファーをしたのは同じく悪役からコミカルな役も演じられるチェ・ウォニョンさんだったのです。
ところがスケジュールの都合から成立せず、その結果オム・ギジュンさんが世紀の悪役を演じることになりました。
その後もオム・ギジュンさんは悪役としてメインを張れる作品に出演しさらなる人気を獲得しています。
二人共既に売れっ子俳優でしたが、ここまで人気のキャラクターになるのであればチェ・ウォニョンさんは惜しいことをしたと思っているかもしれませんね。
チョ・インソンさんといえば出演作はあまり多くないものの、高身長と甘いマスクを活かして好青年からワイルドな役まで演じられる人気俳優として知られています。
代表作にはドラマ「その冬、風が吹く」「大丈夫、愛だ」「ディア・マイ・フレンズ」「ムービング」、映画「ラブストーリー」「霜花店(サンファジョム)−運命、その愛−」「ザ・キング」「安市城(あんしじょう) グレート・バトル」「モガディシュ 脱出ゲームまでの14日間」などがありますが、ブレイクするきっかけとなったのがドラマ「バリでの出来事」です。
「バリでの出来事」は2004年に放送された愛憎劇です。
ハ・ジウォンさん、ソ・ジソプさん、パク・イェジンさんといった人気俳優と共演したこのドラマは最高視聴率40%超えの大ヒット作となり、チョ・インソンさんは2004年の百想芸術大賞でハ・ジウォンさんと共に最優秀演技賞も受賞したことでトップスターの仲間入りを果たします。
このドラマで演じたジェミンというキャラクターは、イケメンな上にオシャレでスマートな御曹司なのに、意外に小心者で劣等感もあり、ケンカもできず父親からも叩かれ、婚約者の心まで奪われてしまうというよく見る御曹司像とはかけ離れたキャラクターでした。
それが新鮮であり、見た目とのギャップもあって視聴者人気が高いキャラクターとなったんです。
しかし当初は、映画「友へ チング」の主演で人気となったユ・オソンさんがジェミン役にキャスティングされていたんです!ところがユ・オソンさんのスケジュールが合わず、チョ・インソンさんが起用されることとなりました。
先ほど見た目と中身のギャップについて説明しましたが、もしユ・オソンさんが起用されていた場合、どう見ても強面なのでケンカが弱そうには見えませんし、ソ・ジソプさんやチョ・インソンさんよりもかなり年上なのもバランスが悪かったかもしれません。
ジェミンはスペックに反して悲惨なキャラクターですが、それとも合っていない気もしますしね。
そういった意味ではチョ・インソンさんが起用されて正解だったと思いますし、チョ・インソンさんとソ・ジソプさんという二人だからこそ人気を二分する事になったんですよね!
続いて紹介するのは、韓国時代劇の巨匠イ・ビョンフン監督のドラマ「薯童謠ソドンヨ」の主演チョ・ヒョンジェさんです。
「ソドンヨ」は大ヒット作「宮廷女官チャングムの誓い」の次にイ・ビョンフン監督が手掛けた作品で、韓国ドラマ史上初めて三国時代の百済を舞台にした作品としても知られています。
百済の王子と敵国新羅の姫との純愛や、平民として育てられた王の四男が国王になる過程を描いた成長ドラマであり、百済と新羅の戦いや権力闘争ドラマでもある「ソドンヨ」ですが、当初主人公役をオファーしたのはイ・ソジンさんでした。
しかし、イ・ソジンさんのスケジュールの都合がつかず、その結果、チョ・ヒョンジェさんが抜擢されることとなりました。
チョ・ヒョンジェさんは“Guardian”というアイドルグループ出身の俳優で、当時既にドラマ「ラブレター」「オンリーユー」などで主演も務めていましたが、経歴的にはまだ新人であり、イ・ビョンフン監督作品の主演に起用というのは正に大抜擢でした。
チョ・ジョンソクさんといえば、ドラマ「賢い医師生活」や大ヒット映画「EXIT イグジット」の主演などで知られる人気俳優ですが、元々はミュージカル界のスターとして成功を収めた後にドラマや映画俳優に転身した方です。
ドラマデビューも2011年と遅く、30代になってから出演した映画「建築学概論」での主人公の友人役で一躍ブレイクします。この役は出演シーンも多くなく、2番手ですらありませんでしたが、彼の主人公に対する友愛や胸熱なセリフは強い印象を残し、青龍映画賞と今年の映画賞で新人男優賞を受賞するに至ります。
その後も、ドラマ「キング 〜Two Hearts」や、初主演ドラマ「最高です!スンシンちゃん」、映画「観相師 -かんそうし-」「王の涙 -イ・サンの決断-」など、人気作やヒット作への出演が続きますが、チョ・ジョンソクさんの知名度を一般層までひろめた作品といえばやはりドラマ「ああ、私の幽霊さま」でしょう!
「ああ、私の幽霊さま」は2015年放送のケーブルテレビドラマで、放送当時ケーブルテレビ局tvN至上No.3という高視聴率を記録した幽霊を題材としたラブコメディです。
内容は地味で気弱なヒロインがある日セクシー幽霊に取り憑かれたことでキャラクターが豹変するというもので、チョ・ジョンソクさんはトラウマを抱えたレストランのオーナーシェフ役を演じています。
主人公に霊感があるとか、悪霊のせいで事件が起きるという展開はのちのち韓国ドラマ内でブームとなりますが、本作はそのきっかけとなった作品の1つであり、幽霊系ドラマを代表する名作です。
主人公のカリスマっぷりや完璧主義なキャラクターはチョ・ジョンソクさんの得意とするところで、一人二役的なヒロインを演じたパク・ボヨンさんとの相性も抜群でした。
そんなチョ・ジョンソクさんの代表作であるこのキャラクターですが、当初別の俳優にオファーをしていたと言われています。
それが誰なのかは不明ですが、今となってはチョ・ジョンソクさん以上に適役な俳優はいないと思いますね!
爽やかな笑顔と高身長でモデルとしても活躍する今注目の俳優ナ・イヌさん。
元々はJYPエンターテインメントの練習生をしており、2013年にミュージカルでデビューします。
2021年に大ヒットドラマ「哲仁王后(チョルインワンフ)〜俺がクイーン!?」への出演により注目を集め、2022年からは人気バラエティ番組「1泊2日」に出演し、2024年初頭からはAmazonプライムで配信されたドラマ「私の夫と結婚して」でパク・ミニョンさんの相手役を務め人気を博しています。
しかし本格的にブレイクするきっかけとなったのが「王女ピョンガン月が浮かぶ川」です。
キム・ソヒョンさん主演のフュージョンロマンス時代劇「王女ピョンガン月が浮かぶ川」は、高句麗を守るために戦う王女ピョンガンと王女を愛した青年オンダルの物語です。
当初、このオンダル役はドラマ「麗〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」や「力の強い女 ト・ボンスン」などで知られるジスさんが演じていましたが、ジスさんのイジメ問題が発覚し事実だと認めたことで途中降板する事態となりました。
既にジスさんで6話まで撮っていたそうですが、代役に起用されたナ・イヌさんで1話から再度撮り直したんだとか。
ジスさんが所属していた事務所はこのトラブルにより30億ウォン(約3億円)の損害賠償請求訴訟を起こされたようです。
主演のキム・ソヒョンさんにとっては大変な事態だったでしょうが、このトラブルにより急遽主演に抜擢されたナ・イヌさんは、ドラマの話題性もあって一気にブレイクを果たします!
いかがでしたでしょうか?
元々のキャスティングの方が良かったのか、キャストが変更されことで成功したのかは今となっては分かりませんが、代役とはいえ掴んだ役を見事に演じ、作品を成功へと導いたのはその俳優さんの実力ということですよね。
チャンスはいつ巡ってくるか分からないからこそ、せっかく掴んだチャンスは無駄にしてはいけませんね!