最近の韓国ドラマでは、全16話ぐらいのものが主流になりつつあるようです。これは、短すぎては物足りないが、長すぎても飽きてしまうという視聴者心理を突いた結果と言えるでしょう。
それでも「イルイルドラマ」や「週末ドラマ」といった週5、週2で放送する長編作品も未だ存在し、長くても中毒性のあるストーリーで多くの視聴者を虜にしています。
そこで今回は、比較的最近放送された、100話以上の長編ドラマからお薦め9作品をご紹介します。
最初にご紹介するのは、2021年公開で全120話の「恋せよ、ヨニ〜アモール・ファティ〜」。心に傷を負った大人たちが、幸せと癒しを見つけ出す姿を描く人生応援ラブコメディです。
チェ・ジョンユンさん演じるト・ヨニは、財閥の長男、パク・ヒョンジュンさん演じるチャン・ジュンホに嫁いで以来、ひたすら家族のために生きてきました。姑や義妹のわがままに耐え、舅の健康に気を使い、気まぐれな夫を献身的に支える良妻賢母でした。
一方、元プロゴルファーの、アン・ジェモさん演じるハン・ジェギョンは、息子を1人で育てながら、デザイナーを目指して留学している、ペ・スルギさん演じる妻カン・ユナの帰りを待ちわびていました。
ようやくユナは帰国しますが、不満ばかりで息子にも愛情を示しません。そんななか、ユナは勤務先で、10年前不倫関係にあったジュンホと偶然再会します。
不倫、女の闘い、出生の秘密など、韓ドラの魅力を詰め込みつつ、辛いことがあっても諦めない主人公たちの前向きな姿と、トキメキあふれる展開に夢中になること間違いありません。
続いてご紹介するのは、2021年公開で全120話の「ごはんに願いを〜人生逆転レストラン〜」。大好きな料理を通して人生を切り開くヒロインを描いたサクセス・ラブストーリーです。
8歳で天涯孤独となった、チョン・ウヨンさん演じるヨンシンは、田舎町で食堂を営む青年、ジェヒさん演じるギョンスと二人暮らしです。常連客が集う食堂でヨンシンは同い年のダジョン、ジョンフン、オボクと毎晩いっしょに食卓を囲み、町の人々から愛情をたっぷり受けて育ちました。
ヨンシンは、高校卒業後、高級韓国料理店に就職。「温かいごはんで空腹の人々を癒す料理人になりたい」という夢に向かって歩み始めますが、思いがけない困難が彼女を待ち受けていました。
「ごはん」の存在が、もう1つの主役としてクローズアップされています。ヒロインが作る、素朴ながら心のこもった、おいしそうな料理の数々も見どころです。
三番目にご紹介するのは、2019年公開で全103話の「優雅な母娘」。悲劇に見舞われた女性が、娘と共に復讐を成し遂げるストーリーです。初回から同時間帯視聴率1位を獲得すると視聴率はグングン上昇し、ラスト2話で最高視聴率23%を記録。また、KBS演技大賞・優秀賞を獲得しています。
チェ・ミョンギルさん演じるミヨンは、ジェイグループ会長の一人娘ユンギョンと同じ日に同じ病院で出産します。しかし担当医ウナの不注意でユンギョンの子供が死亡。ウナはジェイグループの孫を死なせた責任から逃れるため、死んだのはミヨンの子供だと隠蔽します。
さらに悲劇は続き、夫がジェイグループの陰謀により命を落とします。愛する者を一度に亡くしたミヨンは、ジェイグループとウナに憎しみを募らせ、ウナの娘を誘拐してカナダへ逃亡。28年後、ミヨンはキャリー・チョンと名を変え、自分の娘として育てた、チャ・イェリョンさん演じるユジンとともに復讐のために韓国に戻ってきます。
本作は、スリリングな復讐バトルとロマンス、強烈なキャラクター、涙する人間ドラマなど、すべてのマクチャン要素が凝縮されています。ハラハラドキドキの連続と期待を裏切らない面白さは見逃せません。
四番目にご紹介するのは、2021年公開で全150話の「二番目の夫」。夫を奪われ、不幸のどん底に落とされた女の捨て身の復讐劇です。主演二人の演技が高い評価を受け、MBC演技大賞・毎日ドラマ部門で、それぞれ最優秀演技賞をダブル受賞しています。
オム・ヒョンギョンさん演じるソナは、ハン・ギウンさん演じる、夫サンヒョクとの間に息子を授かります。両親を事故で失い、祖母と貧しい生活をしてきたソナは、優しい夫と可愛い息子に囲まれて幸せな生活を送っていました。
しかし、サンヒョクはソナが分娩中、オ・スンアさん演じる会社の上司のジェギョンの誘惑に負け、不倫をしていたのでした。
あるときデパートで女性がスリに合っているところを見かけたソナは、財布を奪い返すが犯人を逃してしまいます。追いかけるソナを止めたのは、財布の持ち主でサンヒョクの不倫相手ジェギョンでした。二人は意気投合し友人となる約束をします。
一方、ジェギョンの異母兄、チャ・ソウォンさん演じるジェミンは、歌手になる夢をあきらめられないでいましたが、あるトラブルをきっかけにソナと出会います。
復讐劇に、母親の子供探しと、シンデレラストーリーが入り混じり、見ごたえ十分なドラマです。
五番目にご紹介するのは、2019年公開で全102話の「太陽の帝国〜復讐のカルマ〜 」。死の淵から這い上がった男が、巨大財閥の乗っ取りを狙う復讐劇です。視聴率17%は、2019年の韓国ドラマでトップ10入りしました。またユン・ソイさんは、本作の演技で、大韓民国文化芸能大賞の最優秀演技賞を受賞しています。
ユン・ソイさん演じる、恋人ユン・シウォルとの幸せな日々を夢見ていた、孤児院出身の会計士、オ・チャンソクさん演じるキム・ユウォルは、大手企業ヤンジグループの会計監査を任される中で、重大な不正を発見します。だが、そのために命を狙われ、車ごと崖から突き落とされてしまいました。
ユウォルの子を妊娠していたシウォルは、彼の死を知ってグループへの復讐を決意し、副会長、チェ・ソンジェさん演じるチェ・グァンイルと結婚。その頃、奇跡的に一命を取りとめたユウォルは、シウォルに裏切られたと思い込み、絶望の淵に追い込まれます。
やがて、彼女とグループへの復讐を誓い、オ・テヤンと名前を変えたユウォルは、投資事業で大成功を収め、再びシウォルの前に姿を現します。
主人公のテヤンの復讐劇が、最初は冷酷で残酷ですが、徐々に愛や正義といった要素が加わり、より複雑で魅力的なキャラクターになっていくところに引き込まれます。
六番目にご紹介するのは、2017年公開で全122話の「棘と蜜 」。貧しいが堂々と生きてきた一人の女性と、一気に転落人生を送ることになった御曹司が出会い、真実の愛と家族に気づき始めていく物語です。
コ・セウォンさんは、MBC最優秀演技賞を、またソン・ソンミさんも優秀演技賞を受賞しました。
バス運転手として働く、カン・ソンヨンさん演じるポク・ダンジは、社長の息子、イ・ピルモさん演じるオ・ミンギュに思いを寄せています。しかし、ミンギュは財閥グループの娘、ソン・ソンミさん演じるパク・ソジンと密かに愛し合っていました。
二人を別れさせたいソジンの母は、ミンギュの父が刑務所送りになるよう仕向け、父を救いたければ別の女性と結婚するよう強要します。ミンギュは、自分に思いを寄せてくれているダンジとの結婚を選択。ダンジはミンギュの心が別にあると知りながらも、愛する人との結婚に幸せを感じていました。
その頃、ソジンはミンギュの子供を妊娠していることに気付きます。以前からソジンに好意を持っていた、コ・セウォンさん演じるハン・ジョンウクは、すべてを受け入れてソジンに結婚を申し込みます。それぞれが別々のパートナーと新たな生活をスタートさせたかに見えましたが、ソジンはミンギュへの思いを断ち切れないでいました。
幸せになるはずだったヒロインが、幾度もドン底に突き落とされてしまう、普段の日常ではあまり起こりえない展開満載のドラマを、ぜひヒロインになり切ったつもりで感情移入しつつ見てみると、とても楽しめます。
七番目にご紹介するのは、2016年公開で全104話の「漆黒の四重奏<カルテット>」。8年前に引き裂かれた4人の男女が再会し、愛憎劇を織りなす物語です。
会社の倒産とともに父が亡くなり、つらい毎日を送っている、ミョン・セビンさん演じるハジンの唯一の幸せは、キム・スンスさん演じるドユンの存在でした。食品会社に入社したドユンと、レシピの開発者として奮闘するハジンは、目が回るほど忙しい毎日を送っていましたが、二人は一緒に時間を過ごすだけで幸せでした。
しかし、ドユンの父ドッペに、ワン・ビンナさん演じるミニの母ヨンスクが、ドユンとミニの結婚を提案します。
さらに、敵対しているチェ一家の、パク・ジョンチョルさん演じるジョンウの子どもを妊娠したミニが、ドユンに必死にすがり付き、ハジンにはドユンと別れることを要求します。ドユンはハジンとハジンとの子どもを守るため、父ドッペに絶縁を決意し、相続放棄を宣言するため、ハジンのもとを訪れます。
政略結婚と初恋の葛藤、リアルな愛の形が見事に描かれていて、一話ごとに引き込まれます。
八番目にご紹介するのは、2014年公開で全126話の「春の輪舞曲<ロンド>」。愛を求めて翻弄される男女の姿を描いたハートフルラブストーリーです。
本作で、チェ・テジュンさんは、MBC演技大賞・男性新人賞を受賞しました。
チョン・ユミさん演じる、27歳の獣医師ソ・ユンジュは、母親から財閥の御曹司、コ・セウォンさん演じるチャ・ソンジュンとの見合い話をしつこく勧められ困惑していました。恋愛結婚を願望していたし、そもそも相手からは、プライドを傷つけられていたのです。
そしてふとしたことから両親の話を耳にし、自分が二人の間に生まれた子ではなく、実の母親は父親の昔の恋人だったと知って、がく然とします。生みの母親に会いたいと思い、ユンジュは手がかりを求めて母親捜しを開始します。
そのころ、ソンジュンの弟、チェ・テジュンさん演じるギジュンがアメリカから帰国しますが、料理人になるという息子に対する父親の怒りは収まりません。やむなく家を出たギジュンが探した下宿先は、兄ソンジュンの火遊びの相手、オム・ヒョンギョンさん演じるキム・スジンの母親が営む下宿屋でした。
そして、偶然の出会いがユンジュとギジュンの間に度重なります。
財閥の御曹司、政略結婚、出生の秘密、継母との確執など、見応えたっぷりのドラマです。また、名女優コ・ドゥシムさんが、子供を奪われた母親役を演じ、涙を誘う演技に目頭を熱くした視聴者が続出しました。
最後にご紹介するのは、2013年公開で全108話の「帝王の娘 スベクヒャン」。帝王の娘である「スベクヒャン」の座をめぐり、異父姉妹の運命が交錯する時代劇 です。
6世紀の百済、第24代東城(トンソン)王の治世末期。加林城の城主ペク・カの娘チェファは、王の従兄にあたるユンと密かに情を通じており、彼の子を身ごもっていました。ユンは佐平(チャピョン)として戦に明け暮れ、チェファが身ごもっている事実を知りませんでした。
戦地から帰ったユンは、もし子供が出来、娘だったら百済を守る花という意味の「スベクヒャン」と名付けようとチェファに話します。その頃、チェファの父ペク・カは東城王によって屈辱を受け、怒りを募らせていましたが、娘とユンの関係を知り、東城王がいなくなれば娘が王妃になるのではと考えていました。
そんな中、ユンの側近ヘ・ネスクから「ユンも東城王の死を望んでいる」とそそのかされ、東城王の暗殺を実行します。
韓ドラの現代劇ではよくある「入れ替わり・成りすまし」設定を時代劇に応用した点が面白いです。政争や復讐などなくても、これだけで十分見応えがあります。政治の話が込み入って会議ばかりする複雑な時代劇が苦手な人でも楽しめるストーリーです。
いかがでしたでしょうか。
それにしても、韓国では長編ドラマが多いのに驚きますね。日本なら、100話を超えるのは朝の連続テレビ小説ぐらいで、ほとんどが短編ドラマですから。
話数が多いと、見る側は根気と忍耐が必要で大変ですが、作り手から言えば、登場人物の成長や変化をじっくり、リアルに描く事ができるので、見ごたえのある作品が出来ることも納得です。
日本のドラマではなかなか味わえない、そういった見ごたえのある作品を、長編韓ドラでお楽しみください。