韓国ドラマ業界では、近年、非現実的な物語よりも、視聴者がどこかで共感できるような、骨太な人間ドラマがトレンドとなっており、秀逸なヒューマンドラマが続々誕生しています。
そこで今回は、韓国人の心を揺さぶった近年の名作ヒューマンドラマ7作品をご紹介します。
最初にご紹介するのは、韓国で2024年に放送された「Mr.プランクトン」です。
余命数ヵ月の宣告を受けた男が、愛する女性をさらって、人生最後の旅に出るヒューマンロマンス。
ソウルで便利屋を営む、ウ・ドファンさん演じるヘジョは、プランクトンのように目的もなくふわふわとした生活を送っていましたが、ある時余命3カ月と宣告されます。
実はヘジョは、人工妊娠で生まれるも取り違えにより、育ての父と実の父が違うのでした。
ヘジョは、人生の最後の時間を使って、実の父親を探す旅に出ることを決意します。
同じころ、元恋人の、イ・ユミさん演じるジェミもまた、早期閉経を宣告されて絶望していました。
由緒正しい家系の1人息子との婚姻を進めていましたが、妊娠できない体になってしまったのです。
ジェミの結婚式当日、ヘジョは花嫁姿のジェミを強引に連れ出し、無理やり父親探しの旅へと同行させることに。
「余命モノ」というと暗いストーリーになりがちですが、全体のトーンはコミカルで明るく、重くなっていません。
また、ヘジョとジェミという、不完全だからこそ愛しいキャラクターを優しく描き出しています。
特に後半の、現在と過去のエピソードを織り交ぜながら、ヘジョの人生が明らかになっていく脚本は見事です。
続いてご紹介するのは、韓国で2018年に放送された「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」です。
理不尽な世の中に翻弄される、若い女と中年男が心を通わせ、互いのやさしさに心を癒されてゆくヒーリングストーリー。
建設会社で働く、イ・ソンギュンさん演じるドンフンは、ある日、差出人不明の5000万ウォンの商品券を受け取ってしまい、匿名の告発を受けた監査部から調査を受けることになります。
しかし、商品券を契約社員の、IUさん演じるイ・ジアンが捨てていた事で、難を逃れたドンフンは彼女と関わりを深めていきます。
ドンフンは彼女が不遇な人生を歩んできたことを知り、少しずつジアンを助けるようになります。
そんなドンフンの優しさに触れるたびに、ジアンの心は少しずつ揺らぎはじめます。
「コーヒープリンス1号店」のハンソン役で人気を博した、イ・ソンギュンさんが、本作ではその温かな魅力を全開させています。
同僚を思い、家族を思う彼の人間的な魅力は、物語が進めば進むほど深みを増していき、イ・ソンギュンさんの「おじさんの魅力」にハマること間違いなしです。
また、ヒロイン役のIUさんは、「麗~花萌ゆる8人の皇子たち~」などのヒット作で、日本でも高い人気を誇りますが、本作では、これまでのキュートなキャラクターとは一転、周囲に心を閉ざして生きるヒロインを見事に演じ、APAN STAR AWARDS最優秀演技賞を受賞。
さらに、「ゴー・バック夫婦」で「最強二番手男子」として人気急上昇中のチャン・ギヨンさんも新人賞を受賞しています。
三番目にご紹介するのは、韓国で2023年に放送された「恋人〜あの日聞いた花の咲く音〜」です。
後金の朝鮮侵攻という激動の時代に翻弄される、男女の運命の愛を描いた歴史ロマンス。
1636年の春のヌングン里。
成均館の儒生たちの熱い視線を集める、容姿端麗で世間知らずな両班の娘、アン・ウンジンさん演じるギルチェは、片想いの相手、イ・ハクジュさん演じるヨンジュンと、イ・ダインさん演じる、親友ウネが婚姻するのではとやきもきしていました。
そして花摘み行事の日、ナムグン・ミンさん演じるジャンヒョンという謎の男が現われます。
お高くとまっているが、実はいじらしく大胆なギルチェに惹かれたジャンヒョンは、それから何かとギルチェを構いますが相手にされません。
そんなある日、後金の軍隊が国境を越えて、朝鮮の首都・漢陽の近くまで押し寄せて来たという知らせが届きます。
まるで「風と共に去りぬ」を思わせる波瀾万丈のストーリーはもちろん、渾身の演技を見せた主演のナムグン・ミンさんをはじめとする俳優たちの演技、そして見事な映像美と人間模様を描き出した演出、ドラマチックな音楽と、すべてが一級品の傑作です。
四番目にご紹介するのは、韓国で2021年に放送された「ナビレラ-それでも蝶は舞う-」です。
踊りに夢を見いだした老人と、才能あふれる青年の二人がバレリーノを目指すうちに、やがて強いきずなが芽生えるヒューマンドラマ。
郵便配達員として家族のために懸命に働いてきた、パク・イナンさん演じるドクチュルは、定年を迎え、自分の残りの人生を考えるようになります。
ある日、ドクチュルはバレエスタジオの前を通りかかり、一人のバレエダンサーの青年が踊る姿に心を奪われます。
その青年こそ、後にドクチョルのバレエの師匠となる、23歳の青年、ソン・ガンさん演じるチェロクでした。
ドクチュルは、子どもの頃にバレエダンサーに憧れていましたが、バレエをやらせてもらえる環境にはなく、70歳を迎え、諦めた夢に挑戦しようと、チェロクが踊っていたバレエスタジオにやってきます。
プロを目指すチェロクや、講師からは最初は相手にされませんが、その情熱に打たれた講師はチェロクにドクチュルのバレエの指導者になるよう提案します。
本作は、何といってもドクチュル役のパク・イナンさんの演技が素晴らしいです。
チェロクのバレエを見かけたときの目線、病床の友人を気遣う素振り、バレエを練習する際の生き生きとした表情など、繊細で心打たれる演技は、大ベテランならではです。
もう1人の主役チェロクを演じるソン・ガンさんは、甘いマスクと恵まれた体格で今や映画やドラマにひっぱりだこの若手スターですが、ため息が出るほど美しいバレエを披露しており、観ているこちらも一気に引き込まれます。
五番目にご紹介するのは、韓国で2024年に放送された「照明店の客人たち」です。
暗い路地裏の照明店を訪れる客人たちをめぐる、切なくも温かいヒューマンミステリー。
本作品は、配信されるや否や一気に話題を集め12月公開にも関わらず、ディズニープラスで2024年に最も視聴された韓国ドラマに躍り出ました。
舞台は薄暗い路地裏にぽつりと佇む怪しげな照明店。
サングラス姿の謎の店主、チュ・ジフンさん演じるウォニョンによって開かれたこの店には、今日も「どこか変わった客人たち」が引き寄せられてきます。
暗闇を彷徨いながらも彼らが辿り着いたこの照明店の正体は、「生と死の境目の世界」でした。
どうやら客人たちの過去、現在、そして未来への鍵を握っているのがこの照明店だといいますが、客人たちの過去が紐解かれたとき、物語は180度景色を変え、驚くべき結末を迎えます。
本作は、ホラーやミステリー、そして感動必至のヒューマンドラマの要素が絡み合った、緻密なストーリーが魅力的です。
バラバラに展開していくように見えるいくつかのエピソードが、実はきっちり計算された伏線になっていて、後半にかけて点と点が線につながっていく瞬間の衝撃をぜひ味わってみてください。
六番目にご紹介するのは、韓国で2025年に放送された「未知のソウル」です。
見た目以外は正反対の双子の姉妹が、ある出来事をきっかけに人生を入れ替えて生きる、心温まるロマンチック成長ドラマ。
陸上の有望選手でしたが、現在はアルバイトで暮らす妹の、パク・ボヨンさん演じるユ・ミジと、エリートのキャリアウーマンである姉の、パク・ボヨンさん一人二役のユ・ミレは、顔だけがそっくりな双子の姉妹です。
ある日、ミレの会社で大きなトラブルが発生し、その危機を乗り越えるため、姉妹は互いの人生を交換して生きることを決意します。
入れ替わって生活を始めた二人は、それぞれの人生のなかで挫折やトラウマと向き合い、他人の人生を背負うことの痛みや優しさを感じながら、本当の自分とは何か、そして生きる意味を問い直していきます。
パク・ボヨンさんが演じる双子の姉妹ミジとミレは、表情、話し方、笑い方、声のトーンまで全く異なり、まるで別人に見えるほどの演技を見せています。
その演じ分けは「さすが」と称されるほどです。
また本作品では、忘れられた初恋、歪んだ家庭、そして心の奥底に眠る願望など、登場人物たちの内面が深く掘り下げられています。
そして都市と田舎の対比演出も加わり、視聴者の心に響くストーリーとなっています。
最後にご紹介するのは、韓国で2021年に放送された「ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です」です。
遺品整理という仕事を通して、様々な人生の終わりに直面しながら、自らの人生についても考え成長していくヒューマンドラマ。
釜山国際映画祭・アジアコンテンツアワードで、最優秀作品賞、最優秀俳優賞、最優秀脚本賞の三冠を達成するなど高い評価を受けました。
アスペルガー症候群の、タン・ジュンサンさん演じるハン・グルは、父親が運営する会社「ムーブ・トゥ・ヘブン」で遺品整理士として働いていました。
そんなある日、父親が心臓発作で急逝し、グルは唯一の家族を失ってしまいます。
一方、グルの叔父、イ・ジェフンさん演じるチョ・サングが刑務所から出所。
グルの後見人候補となったサングは、遺産目当てにグルと一緒に暮らし始めるのでした。
サングは弁護士から課せられた3カ月の試行期間を適当にやり過ごそうと考えていましたが、グルと仕事を共にするうちに、次第に心が動かされていきます。
キャストもしかり、展開もアップダウンのない地味な作品ですが、遺品からにじみ出る故人の夢や両親に対する深い愛情、熱い想いはどれも心に刺さるものばかりで、見終わった後は、自分の人生について深く考えたくなる一作です。
いかがでしたでしょうか。
愛と絆、人間の深い感情を描いた珠玉のドラマを7作品ご紹介しました。
胸が熱くなって、見終えた後も心に感動が残る作品ばかりですね。
日々の忙しさに追われ、心が疲れてしまった日には、こんな温かい感動のストーリーがおすすめです。