韓国ドラマと言えば、これまで全20話前後のものが多いですが、近年は全12話クラスの短編ドラマも増えてきており、魅力ある作品も多数あります。
韓国ドラマ初心者や、長編に少し疲れてしまった方にもお薦めしたいものです。
今回は第二弾として、比較的最近公開された短編ドラマの中から、追加6作品を選びご紹介します。
最初にご紹介するのは、2023年に公開されたドラマ「無人島のディーバ」。
無人島で15年間生き延びた主人公が歌手を目指すヒューマンドラマです。
離島で暮らす中学生の、パク・ウンビンさん演じるソ・モクハは、歌手になることを夢見ていました。
ある日、オーディションを受けるために家を飛び出しますが、不運にもソウルへ向かう船から転落してしまいます。
そのまま無人島に漂流するも、不屈の精神で過酷な日々を生き抜いた彼女は、15年後、清掃活動で島を訪れた兄弟の、チャ・ハギョンさん演じるウハクと、チェ・ジョンヒョプさん演じるボゴルに救助されます。
モクハの無人島生活を支えてくれたのは、憧れの歌手、キム・ヒョジンさん演じるユン・ランジュの歌でした。
しかし、ランジュはモクハが社会生活から離れていた間にすっかり落ちぶれていました。
日本のドラマではまず見られない、奇想天外な展開が次々と私たちを待ち受けており、韓国ドラマはやっぱり発想が面白いと思わず唸ってしまいます。
また、本作では「歌手になるのが夢」という設定から、モクハが歌うシーンが多いのですが、これはパク・ウンビンさんが口パクでなく、正真正銘歌っており、あらためてその才能に驚かされます。
続いてご紹介するのは、2022年に公開されたドラマ「エージェントなお仕事」。担当する芸能人の機嫌をとりながら、その魅力を引き出すために奮闘する芸能事務所のエージェントの仕事ぶりと日常を描いた物語です。
フランスの国民的ドラマとなった「エージェントの物語」のリメイク版で話題になりました。
ある日、芸能事務所「メソッドエンターテインメント」の代表ワン・テジャがバカンス先で事故死してしまいます。突然代表が亡くなり、彼が横領していた事実が発覚します。
会社は直ぐに資金難になり、監査も入り、代表の妻は会社を売りに出そうとします。
次期代表と思われていた総括理事の、イ・ソジンさん演じるマ・テオは、他社に引き抜かれる話が持ち上がったり、所属の俳優たちは、他社に移籍すると言いだしたり、会社の運営が怪しくなってきました。
「メソッドエンターテインメント」に思い入れもあり、このまま終わりたくないマネージャー達は、会社存続の方法を模索しつつ、所属俳優のケアに振り回されます。
芸能事務所やマネージャーの仕事の実態を興味深く伺い知れ、芸能界の裏側がちょっぴり見えるのが面白いです。
また、イ・ソジンさんのダンディな魅力と、クァク・ソニョンさんの個性的な魅力がぶつかり合う中で、主人公二人の性格や仕事スタイルが正反対でありながら、互いに惹かれ合っていく姿が見ものです。
三番目にご紹介するのは、2024年に公開されたドラマ「殺し屋たちの店」。
亡き叔父が残した「危険な遺産」のために、突如殺し屋たちに命をねらわれることになった、女子大生の生き残りを懸けた戦いを描くクライムスリラーです。
唯一の保護者だった叔父、イ・ドンウクさん演じるジンマンの突然の死後、キム・ヘジュンさん演じるジアンは、叔父が残した怪しいショッピングモールの存在を知ることになります。
叔父は何者だったのか、そしてこのショッピングモールの正体は何なのか。
ジアンが立ち直る間もなく、ショッピングモールの倉庫を狙う謎の人々による襲撃が始まります。
たった一人残されたジアンは、果たして彼らを相手に生き残ることができるのでしょうか。
とにかくアクションが圧巻です。
体術やガンアクションなど緊張感と疾走感に溢れ、韓国アクション特有の血がたくさん出てくるバイオレンスもあります。
また、ドローンやロボット兵器などの武器も登場してくるのは、かなり最先端のアクション作品と言えます。
そして映画のように重厚感があり、どこか荒廃的な雰囲気のある映像もみどころです。
四番目にご紹介するのは、2023年に公開されたドラマ「イドゥナ！」。
シェアハウスと大学を舞台に繰り広げられる切ない青春ラブストーリーです。
アイドルとして人気絶頂だった、スジさん演じるイ・ドゥナは、突然引退を決め、ミンソン大学に復学し、シェアハウスで暮らすことにします。
そして同じ大学に通う、ヤン・セジョンさん演じるイ・ウォンジュンも同じシェアハウスに引っ越してきました。
はじめはすれ違いや、勘違いでウォンジュンを毛嫌いするドゥナも、彼の純粋さに気づき心惹かれていきます。数々の困難に立ち向かいながらも、仲を深めていく2人の恋のゆくえは—。
恋愛以外の要素を極力省き、近づくと遠ざかり、遠ざかると近づく、ときめきと好奇心に満ちた青春ロマンス作品です。定石にハマらない恋愛物語の傑作の誕生と言えるでしょう。
そして本作で際立つのは、間接的な表現で、そのため想像力がかきたてられ、様々な解釈ができるのが醍醐味です。
五番目にご紹介するのは、2024年に公開されたドラマ「殺人者のパラドックス」。
殺人を繰り返す青年と、そんな彼を執拗に追う一人の刑事を中心に、善と悪の境界に迫ったサスペンスドラマです。
チェ・ウシクさん演じる、さえない大学生イ・タンは、ある日、コンビニでのバイト帰りに、客の男性に理不尽な暴力を振るわれたため、反撃し誤って殺害してしまいます。
最初は罪の意識に苛まれるイ・タンでしたが、警察は来ず、自白をしようとしてもタイミングが悪く上手くいきません。
なんと、犯行に繋がる凶器や指紋などの証拠は全て消えていたのです。
その後も不本意ながら殺人を犯してしまうイ・タンでしたが、殺した人々がいずれも凶悪な犯罪者と判明。
イ・タンは、自身に悪人を見分け、殺しても気づかれない稀有な能力があることに気づきます。
しかし、勘のいい刑事、ソン・ソックさん演じるチャン・ナンガムだけが、イ・タンに疑いの目を向けていました。
本作のすごさは、やはりイ・タン役のチェ・ウシクさんにあります。
「殺人に特化した」特殊な能力がある男だが、殺人の快感に目覚めるわけでも、正義感にあふれるわけでもない複雑な役を演じて魅了しました。
気力のない青年が、人を殺す瞬間にひょう変するという演技は圧巻です。
最後にご紹介するのは、2022年に公開されたドラマ「ハピネス」。
新たな感染症が蔓延する近未来を舞台に、混乱と生存を賭けた戦いを描くサバイバルスリラーです。
新築マンションに、警察特別優先枠の募集がかかり、警察特攻隊員の、ハン・ヒョジュさん演じるセボムに、長年の夢だったマイホームが手に入る絶好のチャンスが到来。
対象になるために足りない点数を「新婚」で補おうと、親友で刑事の、パク・ヒョンシクさん演じるイヒョンと形だけの夫婦になってもらい、憧れのマンションに入居します。
ところがその矢先、発症すると人を襲うという謎の感染症が蔓延します。
感染者が出た二人が住むマンションは住人を取り残したまま封鎖され、感染者は日に日に増えていきます。
セボムとイヒョンはマンションの人々を守るために奮闘しますが…。
本作は、欧米のゾンビものや、過去の韓国作品のよさを踏襲しながらも、独自の工夫を加えています。
それは、一時的に常人として生きられるが、ノドの渇きを感じ始めたり血を見たりすると、たちまちゾンビに戻るという設定が斬新です。
ゾンビものとしては描写は過激でなく、主役の二人によるほのぼのとしたシーンも多いので、ゾンビものが嫌いな人にもお薦めです。
いかがでしたでしょうか。
短編とは言え、脚本が面白く充実している韓国ドラマは沢山あります。
話数が多い長編ドラマは苦手だという方には、一日で一気見も可能な短編ドラマの視聴をお薦めします。