朝鮮王朝には27人の国王がいたといわれていますが、クーデターで廃位となったのは燕山君と光海君の二人で、よく朝鮮王朝の二大暴君と言われています。
しかし演じる側から言うと、演技力が無ければ、オファーすら受けられませんが、うまく演じ切ることが出来れば絶賛されること間違いなしという魅力的なキャラクターです。
今回は、この二人の難役を演じた魅力的な俳優を一挙ご紹介します。
朝鮮王朝二大悪王とは?
先に言いました通り、通常は、クーデターで廃位となった燕山君と光海君の二人を、朝鮮王朝の二大悪王と言うようです。
以下、それぞれについて簡単にご紹介します。
燕山君(ヨンサングン) 在位期間1494~1506年
朝鮮王朝第十代国王です。陰謀のため廃妃となった母のユン氏が、王命による死刑を命じられた時、燕山君はわずか6歳でした。
そして18歳で国王に即位すると、4年後に母の死の真相を聞かされ、それに関与した者を皆虐殺するなど、宮廷を血に染めました。
母親の愛情を受けず、孤独に育った燕山君に近寄り、息子のように扱った、側室のチャン・ノクスは、燕山君の享楽と暴政に散財など、傍若無人ぶりを助長しました。
しかし燕山君は、1506年の朝鮮初のクーデターにより、江華島に追放され、30歳の若さで死去しています。
光海君(クァンヘグン) 在位期間1608~1623年
朝鮮王朝第15代国王です。
側室の次男だったため権力基盤が弱く、光海君は、実兄の臨海君(イムヘグン)と異母弟の永昌大君(ヨンチャンテグン)を殺し、更に継母の仁穆王后(インモクワンフ)を庶民の身分に落とし幽閉するなど、王権を脅かす者は容赦なく排除していきました。
しかし燕山君同様、クーデターで廃位された光海君は、江華島に流され66歳で死去しました。
かつては、暴君として描かれることが多かったですが、豊臣秀吉の朝鮮出兵による戦乱で疲弊した国内の復興政策や、日本との国交回復、更には満州族系の後金との関係も重視するなど、東アジアの諸民族間でバランスの取れた中立外交政策などの実績を残しており、評価の見直しが進んでいる人物です。
燕山君(ヨンサングン)を演じた俳優
キム・ジソク
最初にご紹介するのは、2017年のドラマ「逆賊-民の英雄 ホン・ギルドン」で、燕山君を演じたキム・ジソクさんです。
2004年から様ざまなドラマで、主に二番手男子を演じ、抜群の存在感を見せてきましたが、本作ではこれまでのイメージを一転、朝鮮王朝史上最悪の暗君を演じました。
身分は低いが、民の支持を得た主人公のホン・ギルドンに危機感を覚え、徐々に狂気に満ちていく様をリアルに演じ、好評を博しました。
イ・ドンゴン
続いてご紹介するのは、2017年の「七日の王妃」で、初の時代劇に挑み、難役の燕山君を演じて新境地を開拓したイ・ドンゴンさんです。
2004年に「パリの恋人」でブレイクし、甘いマスクで愛されてきましたが、本作では、王位を奪われる不安から凶暴化していく一方で、ロマンチックな一面もみせる燕山君をダイナミックに演じ、その年のKBS演技大賞で、優秀演技賞を獲得しました。
キム・ガンウ
三人目は、演技派のキム・ガンウさんです。2007年に、人気漫画が原作の「食客」で主演を務め、300万人の観客動員数を記録し、一躍「興行俳優」として名乗りを上げました。
そして、燕山君の狂気ぶりが、史実に基づき最もリアルに描かれたと評価される、2014年の映画「背徳の王宮」では、鬼気迫る演技で燕山君を演じ、絶賛されました。
チョン・ジニョン
四人目は、大ヒットした2005年の映画「王の男」での名演が光ったチョン・ジニョンさんです。
ソウル大学を卒業して「学者俳優」とも言われますが、俳優だけでなく、シナリオライターや演出家、作家も経験しており、演技だけでなく知性で視聴者を魅了する俳優です。
本作では、LGBTという繊細なテーマをストーリーの中に取り込み、身分の低い芸人に惹かれる、新たな燕山君象を描き上げ、1000万人以上の観客動員数を記録しました。
その他にも、1995年のドラマ「張緑水(チャン・ノクス)」のユ・ドングンさん、1998年「王と妃」のアン・ジェモさん、2007年「王と私」のチョン・テウさんが、それぞれ燕山君を好演しています。
光海君(クァンヘグン)を演じた俳優
イ・ビョンホン&ヨ・ジング
最初にご紹介するのは、イ・ビョンホンさんとヨ・ジングさんです。
光海君に対するイメージを大きく変えるきっかけとなった記念すべき映画が、2012年の「王になった男」です。
この映画を機に、その後のドラマや映画での、光海君の描かれ方が多様化するようになりました。
本作では、「演技の神」と言われるイ・ビョンホンさんが、暴君とその影武者の一人二役を熱演。
また7年後の2019年には、ドラマとしてもリメイクされ、子役出身の若手演技派の筆頭格であるヨ・ジングさんが、まるで光海君が憑依したかのように演じ、視聴者たちを感嘆させました。
イ・サンユン
三人目にご紹介するのはイ・サンユンさんです。ソウル大学物理学科出身という異色の経歴の持ち主で、長身と頭脳と容姿を兼ね備えたエリート俳優です。
数多くの話題作に出演し、その演技力も認められています。
2013年の「火の女神ジョンイ」では、若き日の光海君をロマンティックに演じ、視聴者を魅了しました。
ソ・イングク
四人目にご紹介するのは、 2014年のドラマ「王の顔」で、初の時代劇に果敢に挑戦し、難役の光海君を演じた、人気韓流スターのソ・イングクさんです。
オーディション番組「スーパースターK」で、72万人の頂点に立った逸材で、ほのぼのとした外見とやわらかな歌声で女性視聴者からの人気を一身に受けました。
デビュー後は歌だけでなく、ドラマやミュージカルで演技にも挑戦して活躍している俳優です。
本作では、観相による「王にふさわしい顔」をめぐり、またヒロインとの三角関係で父の宣祖(ソンジョ)と対立するという、従来の光海君をテーマとした作品とは、一風変わったストーリー展開で好評を博しました。
チャ・スンウォン
五人目は、2015年のドラマ「華政(ファジョン)」で、光海君を演じた、モデル出身のチャ・スンウォンさんです。
本作は、光海君の異母妹のチョンミョン公主の波乱万丈な生涯を描いた作品で、チャ・スンウォンさんは、抜群のビジュアルと圧巻の演技力で、ドラマの前半をリードしました。
その他にも、1999年のドラマ「ホジュン 宮廷医官への道」では、キム・スンスさん、また2003年の「王の女」では、チソンさん、更に2013年の「ホジュン 伝説の心医」では、イン・ギョジンさん、そして2019年の「ノクドゥ伝〜花に降る月明かり〜」では、チョン・ジュノさんと、2021年の「ポッサム」のキム・テウさんなど、多くのそうそうたる演技派俳優が、光海君を演じています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
燕山君と光海君。
この二人が直接主人公としてではなくとも、多少なりとも関わってくる朝鮮時代劇の何と多いことでしょうか?
この二人が居なければ、半分くらいの韓国時代劇が無くなってしまうか、あるいは面白味が半減しそうですね。
それにしても、燕山君はともかく、光海君も「悪王」扱いで描かれるのは気の毒な気がします。
既に述べたように、戦後復興や外交面、文化面での功績も大きかったようですから、本人の名誉挽回のためにも、今後は、「名君」としての光海君を描いたドラマや映画が制作されたらと願います。
コメント