韓国ドラマを見ていると「この役には絶対にこの人しかありえない」と思うほど、役にぴったりハマっている俳優が多く、視聴者を魅了する演技に感心しますよね。ですが、もしその役が元々ほかの誰かが演じる予定だったと聞くとどうでしょうか?
ドラマの制作過程で、その役柄に合う人を選んで声をかけますが、俳優にとっても作品を選ぶことはとても大事なことで、時には様々な理由でオファーを断ることもあります。
そして、誰かが断った役を引き受け、成功をおさめている俳優もたくさんいるのです。
今回は、めぐってきたチャンスを見事につかみ、代役で成功した韓国俳優を6人紹介します。
「韓国No.1ヒットメーカー」とも言われる天才脚本家キム・ウンスク氏が手がけたドラマ「太陽の末裔」は、主演のシジン役をソン・ジュンギさんが演じ、最高視聴率41.6%を記録し大ヒットしました。
ソン・へギョさん演じる医師のモヨンと、軍人シジンの恋模様にキュンキュンさせられた方も多いのではないでしょうか。責任感が強く、男らしいエリート軍人シジンを演じたソン・ジュンギさんはまさに「ハマり役」そのものでしたが、キャスティングの際ソン・ジュンギさんは第一候補ではなかったというから驚きです。
ソン・ジュンギさんがオファーされる前に名前が上がったのは、ウォンビンさん、コン・ユさん、チョ・インソンさん、キム・ウビンさん、イ・ミンホさんといったスター級の俳優たちでした。
しかし、100%事前制作だったこと、軍人が主演の作品がヒットした前例がなかったこと、長期間の海外ロケでスケジュールの調整が難しいことなどが理由で誰も引き受けなかったそうです。
そんな中、ソン・ジュンギさんは兵役中にこの役のオファーをもらい、軍人が主人公だったこともあり演じやすいだろうと思ったのだそう。除隊後の復帰作としてほかの作品のオファーも多数あったようですが、大物俳優が誰も引き受けなかった役で結果的に大成功をおさめることとなりました。
14世紀に実在した奇皇后の壮絶な人生を描いた歴史ドラマ「奇皇后~ふたつの愛 涙の誓い~」。主演のハ・ジウォンさんは2013年MBC演技大賞で大賞を受賞し、ドラマ全体では7冠という結果を残した大ヒット作品です。
特別企画優秀賞を受賞したチ・チャンウクさんは、元の皇帝タファン役を演じ、完璧なビジュアルと多彩な表現力で多くの人を魅了しました。
豪華できらびやかな衣装も、華やかな顔立ちのチ・チャンウクさんにとてもお似合いでしたよね。
チ・チャンウクさんにぴったりのタファン役でしたが、最初のキャスティングでは彼の名前は上がっていませんでした。最初にオファーされていたのは、ドラマ「ファン・ジニ」でハ・ジウォンさんと共演経験があったチャン・グンソクさんでしたが、スケジュールの都合がつかず出演できなかったとのこと。
チ・チャンウクさんがタファン役に決まったときにはすでに撮影が始まっていて、後から合流しての撮影だったこと、なかなか決まらないタファン役を誰が演じるのかという注目もあったことから、まわりの様子が気になりプレッシャーも感じたそうです。
そんなプレッシャーの中、チ・チャンウクさんはタファンの様々な心情を見事に表現し、演技力を再評価されることとなりました。「奇皇后」の出演で人気を確立させたチ・チャンウクさんは、今では「視聴率王子」「アジアの貴公子」とも呼ばれ、韓国のみならず他国からの支持も厚い人気俳優となりました。
「応答せよ1997」は、バラエティー番組の脚本家として活躍していたシン・ウォンホプロデューサーが初めて手がけたドラマで、ケーブルテレビ史上最高視聴率を記録する大ヒット作となりました。主演を務めたのは、オーディション番組「スーパースターK」で優勝し、歌手として活動していたソ・イングクさんです。
それまでほとんど演技の経験がなかったソ・イングクさんは、幼馴染のシウォンに一途に想いを寄せる不器用な釜山男子ユン・ユンジェ役を演じ、その演技力が評価され一躍人気俳優の仲間入りを果たしました。
「方言を使う男性が魅力的に見える」という言葉が生まれるほど、ぶっきらぼうだけどどこか愛しい釜山男子ユンジェがソ・イングクさんにぴったりハマっていましたよね。そんなユンジェ役ですが、当初シン・ウォンホプロデューサーはイ・ミンギさんに演じてほしかったようですが、勇気がなく電話すらできなかったと語っています。
その後、手あたり次第にほかの俳優にも声をかけましたが、バラエティー出身のシン・ウォンホプロデューサーの初ドラマだったため、引き受けてくれる俳優が見つからなかったそうです。
結局は、「コンテンツが良ければ視聴者は見てくれるようになるだろう」と考え、当時俳優としては無名だったソ・イングクさんを起用したところドラマは大ヒット!自身の初のドラマに無名俳優を主演に抜擢したシン・ウォンホプロデューサーも、誰もが断った役を見事に我が物にしたソ・イングクさんも本当にすごいですよね。
「ミセン」といえば、韓国であらゆる世代の共感を呼び、社会現象となった名作ドラマですよね。
韓国のサラリーマンのバイブルと言われたWEBコミックをドラマ化した「ミセン」は、主人公のチャン・グレ役をアイドル出身のイム・シワンさんが演じました。
チャン・グレはイム・シワンさん以外考えられないというほど見事な演技で視聴者の心をつかみましたが、キャスティングの段階で最初に声がかけられたのはイ・ジェフンさん、イ・ジョンソクさん、チ・チャンウクさんといった名だたる顔ぶれの俳優でした。
しかし誰もオファーを受けることはなく、イム・シワンさんにチャン・グレ役が回ってきたのです。
イム・シワンさんはアイドルグループZE:Aとしてデビュー後、「太陽を抱く月」「赤道の男」などのドラマで演技活動もしていましたが、このチャン・グレ役で第51回百想芸術大賞で新人演技賞を受賞し、アイドルではなく俳優としての魅力と才能を見せつけました。
その後はドラマだけでなく映画にも出演するようになり、2017年の映画「名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」では、第70回カンヌ国際映画祭でミッドナイト・スクリーニング部門に招待されました。
演技ドルとして初めてカンヌのレッドカーペットを歩いたことで注目を浴びたイム・シワンさんですが、なんと2021年には映画「非常宣言」で二度目のカンヌ入りを果たしています。
「ミセン」はイム・シワンさんの運命を変えた一作と言っても過言ではないですね。
「キルミー・ヒールミー」で7つの人格を持つという難しい役を見事に演じ、大きな注目を集めたチソンさん。
第51回百想芸術大賞では男性最優秀演技賞にノミネートされ、2015年MBC演技大賞で大賞を受賞するという評価を受けました。
チソンさん以外に誰がこの役を演じられるのかと思うような難しい役柄でしたが、最初に声がかかっていたのは、なんとヒョンビンさんだったそうです。当時ヒョンビンさんは除隊後の復帰作を選んでいるところで、どうにかヒョンビンさんに受けてもらいたいと制作会社はかなり奮闘したようです。
除隊後の復帰作、ましてやそれがヒョンビンさんとなると注目間違いなしですし、制作会社が必死になるのも納得ですよね。
しかしヒョンビンさんが選んだのは残念ながら別のドラマでした。
チソンさんはキャスティングが難航していると記事を読んで知り、「僕にやらせてくれたら…」と考えていたところオファーがきたそうです。配役の難航で合流が遅れたため、7つの人格を持つという難しい役を1ヵ月で準備することになりましたが、たった1ヵ月で準備したとは思えないような演技で視聴者を魅了しました。
共演のファン・ジョンウムさん、パク・ソジュンさんらの力もあり、MBC演技大賞ではチソンさんの大賞を含む12冠に輝き、ドラマ自体も大成功をおさめています。
キム・ウビンさんの名前が広く知られるきっかけとなったドラマ「相続者たち」。
財閥御曹司が集まる名門高校で繰り広げられる、高校生たちの友情や葛藤、恋愛模様を描いたドラマで、韓国のみならず日本でも大ヒットしましたよね。
イ・ミンホさん、パク・シネさん、キム・ウビンさんなど今では主役級のキャストばかりで、改めて見てみるとその豪華さに圧倒されますね。
キム・ウビンさんはイ・ミンホさん演じるキム・タンと仲たがいした元親友のチェ・ヨンド役を熱演し高い評価を受けましたが、元々ヨンド役にはCNBLUEのジョン・ヨンファさんがキャスティングされていました。
結果的にジョン・ヨンファさんはオファーを断ったのですが、その理由について「学生役よりほかの役を演じてみたかった」「パク・シネさんと立て続けに共演するのはお互いに良くないと思った」と明かしています。
パク・シネさんとは「美男ですね」で共演して以来、たびたび熱愛が噂されていたため、共演が続くのはお互いにとって良い影響がないと判断されたようですね。
そこで代役を務めることになったのが当時まだ新人俳優だったキム・ウビンさんでした。
孤独を抱えるヨンドの複雑な心情をうまく表現し、主役に負けず劣らない圧倒的な存在感を見せつけ、キム・ウビンさんが俳優として大きく成長した作品となりました。
代役で成功した俳優を6人紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
どのドラマも大ヒットした作品ばかりで、「まさかあの役が代役だったなんて!」という驚きもあったのではないでしょうか。今ではスター級の俳優が、代役で演じた作品をきっかけに大きく飛躍したと思うととても不思議ですよね!
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