韓国映画やドラマで活躍する、人気と実力を兼ね備えたトップスターと言えば、皆さんは誰を思い浮かべるでしょうか?
選定する際のキーワードにも、「四天王」、「国民4大公共財」、「視聴率王子」、「興行収入や観客動員数」、「演技大賞の受賞回数」などいろいろありますよね。
そのなかの一つに「1億俳優」という言い方もあります。
今回は、そう呼ばれる俳優三人について、プロフィールや出演作品についてご紹介します。
韓国には「1億俳優」というわかりやすい呼び方があります。
主演映画の累計観客動員数が1億人を超えた俳優に与えられる称号のようなもので、ソン・ガンホさん、ハ・ジョンウさん、そしてファン・ジョンミンさんの三人が、1億超えしたトップスターと言われています。
それでは、ソン・ガンホさん、ハ・ジョンウさん、ファン・ジョンミンさんの三人について、一人ずつそのプロフィールや出演作品などについてご紹介します。
最初にご紹介するのは、俳優のみならず、映画監督や脚本家に、映画プロデューサーまで務める多彩な能力を持つ演技派のハ・ジョンウさん、1978年3月11日ソウル市生まれの46歳(2024年現在)です。
1998年にCM出演で商業デビュー。大学卒業後は、「カルメン」や「オセロ」など20作余りの舞台演劇に出演してキャリアを積み、2003年「マドレーヌ」でスクリーンデビューを果たしました。
時を同じくしてドラマ界にも進出し、「プラハの恋人」で注目されると、2006年「絶対の愛」、2007年「ブレス」を経て、韓国の映画賞を席巻した2008年の「チェイサー」で連続猟奇殺人犯を演じ、一躍脚光を浴びました。
また2010年「国家代表!?」、2011年「哀しき獣」、そして2013年「ベルリンファイル」で、それぞれに百想芸術大賞・映画部門の男性最優秀演技賞を連続受賞しています。
そして、2013年には、「ローラーコースター」で映画監督デビューを果たしました。
更に、2017年公開の主演映画「神と共に 第一章:罪と罰」が、観客動員数1,441万人を突破する大ヒットを記録。また翌2018年公開の続編「神と共に 第二章:因と縁」も観客動員数1,227万人を突破しました。
こうしてハ・ジョンウさんは、主演作1億人突破という快挙を最年少で達成し、ソン・ガンホさん、ファン・ジョンミンさんに引き続き、韓国俳優三番目の1億俳優となりました。
それでは、ここでハ・ジョンウさん主演のお薦めドラマを一つご紹介します。
2017年公開の「神と共に 第一章:罪と罰」。
一度死んだ男が、冥界の使者たちと共に7つの地獄で裁判を受け、新たな人生を目指す姿を描いています。
人気ウェブコミックを実写映画化し、世界的ヒットを記録したファンタジーアクションで、韓国では歴代3位となる、観客動員数1,441万人を記録しました。
ビルの火災現場で少女を救い、殉職した消防士、チャ・テヒョンさん演じるキム・ジャホンのもとに、冥界の使者である、チュ・ジフンさん演じるヘウォンメクと、キム・ヒャンギさん演じるドクチュンが現れます。
冥界では、すべての人間は死後49日間に裁判を7回受けねばならず、殺人地獄・怠惰地獄・裏切り地獄・不義地獄・ウソ地獄・暴力地獄・天倫地獄という7つの地獄での裁判を通過した者だけが新たな人生を始められるといいます。
冥土の入口である初軍門では、使者のリーダーであり裁判でジャホンを弁護する、ハ・ジョンウさん演じるカンニムが待っていました。
弁護士のカンニム、護衛のヘウォンメク、補助弁護士のドクチュン、そしてジャホンの4人は7つの地獄に挑みます。
地獄を映像化した美術のクオリティの高さや、VFXをフル活用したスタイリッシュでスピーディーなアクションはこの作品の最大のウリです。
また、イケメン俳優がロングコートを翻し、美しいソードアクションを演じる姿に見惚れてしまいます。
続いてご紹介するのは、親しみやすさが魅力で、韓国を代表する演技派俳優のソン・ガンホさん、1967年1月17日 慶尚南道金海市生まれの57歳(2024年現在)です。
中学生時代に俳優を志し、24歳の時に釜山の地方劇団で民族劇に参加します。
そして1990年に、劇団「演友舞台」の地方公演「チェ先生」に端役で出演すると、「ピオンソ」など10作余りの演劇作品に助演として出演しました。
1996年に、映画「豚が井戸に落ちた日」で長編映画初出演を果たすと、翌1997年、「ナンバー・スリーNO.3」への出演で、大鐘賞・新人男優賞、青龍映画賞・助演男優賞などを受賞し、一躍脚光を浴びました。
また1999年には、映画「シュリ」に出演。観客動員数582万人を記録し、当時の国内最多観客動員数を更新し、翌2000年には、コメディ映画「反則王」で初主演を果たしました。
更に同年、映画「JSA」にオ・ギョンピル中士役で出演すると、観客動員数583万人を記録し、当時の歴代興行収入1位を記録します。
ソン・ガンホさん自身も、釜山映画評論家協会賞、大鐘賞、ドゥーヴィル・アジア映画祭・主演男優賞を受賞し、百想芸術大賞で人気賞を獲得するなど、多数の授賞式でその演技力とスター性を認められました。
以降、ソン・ガンホさんが出演した映画は、2003年「殺人の追憶」や、2007年「グエムル-漢江の怪物-」など多数に及びますが、ほとんどが興行的に成功し、2014年1月時点で出演映画の通算観客動員数は8,200万人余りに達しました。
そして、2015年9月の主演映画「王の運命 -歴史を変えた八日間-」で、620万人の観客を動員。同年9月の「密偵」も、観客動員数750万人を突破しました。
この時点で、ソン・ガンホさんは、自身の主演作だけで合計1億人を突破した、韓国史上初の俳優となったわけです。
それでは、ここでソン・ガンホさん主演のお薦めドラマを一つご紹介します。
2019年公開の「パラサイト 半地下の家族」。
半地下の貧乏アパートに住む一家が、豪邸に暮らすセレブ一家に寄生しようと企んだことから始まる痛烈なブラックコメディーです。
本作は、カンヌ国際映画祭のパルムドール賞と、アカデミー賞では作品賞を含め4部門受賞という、世界の映画史に残る快挙を達成しています。
半地下住宅で暮らすキム一家。ソン・ガンホさん演じる、父のキム・ギテクは計画性も仕事もない楽天家。
チャン・ヘジンさん演じる、母チュンスクは、そんな不甲斐ない夫に強く当たっています。
チェ・ウシクさん演じる息子のギウは、大学受験に落ち続け、パク・ソダムさん演じる娘のギジョンは、美大を目指すが上手くいきません。
しがない内職で日々を食いつないでいる貧しい彼らは、皆、普通の暮らしがしたいと願っていました。
ある日、ギウを訪ねて、今や名門大学生となった友人ミニョクがやってきて、留学する間、彼に代わって家庭教師をしないかと持ち掛けます。
ギウが向かったのは、IT企業の社長、イ・ソンギュンさん演じるパク・ドンイクの自宅で、高台に佇むモダンな建築の大豪邸でした。
若く美しい妻、チョ・ヨジョンさん演じるヨンギョに、娘ダへの部屋へと案内されるギウ。
受験のプロのギウは、母と娘の心をすっかり掴んでしまいます。
長男のギウが家庭教師としてパク家に潜入するところから始まり、ギジョン、ギテク、チュンスクと、次々にキム家が寄生していく展開がとてもスピーディで吸い込まれます。
また、予想に反し、思わぬ方向に進んでいく、中盤以降の展開には、韓国が置かれている厳しい現実と、最後の救いであり心の拠り所となる「家族」の存在が描かれ、日本人にも共感できるものです。
最後にご紹介するのは、徹底的な役作りと演技力で知られ、日本でも圧倒的な知名度を誇るファン・ジョンミンさん、1970年9月1日慶尚南道馬山市生まれの54歳(2024年現在)です。
1990年、映画「将軍の息子」で俳優デビューしますが、翌年から兵役に就き除隊後は演劇やミュージカルなどで舞台俳優として活動します。
1999年に「シュリ」でスクリーンに復帰すると、2001年の「ワイキキ・ブラザーズ」で注目を浴びました。
初主演を飾った2002年の映画「ロード・ムービー」で、青龍映画賞の新人男優賞を受賞。
また2005年に、映画「甘い人生」で、大鐘賞映画祭・男優助演賞を受賞すると、同年、大ヒットを記録した「ユア・マイ・サンシャイン」で、青龍映画賞・主演男優賞に輝きました。
更に2009年には、「アクシデント・カップル」でTVドラマに初出演し人気を確固たるものにします。
そして、2013年のクライムサスペンス「新しき世界」で、二度目の青龍映画賞・主演男優賞を受賞。
2015年には、「国際市場で逢いましょう」と「ベテラン」が、どちらも観客動員数1000万人を超え、続く「ヒマラヤ」も約750万人を動員、1年間で3千万人動員という記録を達成。
その後、2017年の「軍艦島」を経て、累積観客動員数1億人を突破し、「1億俳優」の仲間入りを果たしました。
それでは、ここでファン・ジョンミンさん主演のお薦めドラマを一つご紹介します。
2013年公開の「新しき世界」。
韓国最大の犯罪組織に潜入捜査中の警察官が、兄と慕う組織幹部との絆の狭間で苦悩するドラマです。
韓国では、青少年観覧不可でありながら、観客動員468万人を記録しました。
韓国最大の犯罪組織に潜入し、8年になる警察官、イ・ジョンジェさん演じるジャソンは、潜入捜査に疑問を感じながらも、チェ・ミンシクさん演じる上司のカン課長の命令に服従するしかありません。
一方でジャソンは、自分と同じ中国系韓国人である組織のNO.2、ファン・ジョンミンさん演じるチョン・チョンが、自分に寄せる信頼と実の兄のような情を、裏切っていることに深く葛藤していました。
そんなある日、組織のリーダーが急死し、後継者争いが勃発。カン課長は一気に組織の粉砕を目論み、「新世界」作戦を始動させますが、その作戦とは、ジャソンを組織のトップに据えることでした。
ジャソンは自身の「新しき世界」の選択を迫られます。
本作は、ファン・ジョンミンさんの代表作で、演じるチョン・チョンというキャラクターの魅力は特筆すべきものがあり、ファン・ジョンミンさんの演技には、韓国で「トップ・オブ・トップ」という賛辞が殺到したそうです。
空港にサングラス、白いスーツにスリッパ姿の初登場シーンもインパクト大ですが、子供がそのまま大人になったような屈託のなさ、率直さ、情の深さなど、チョン・チョンという人間の持つカリスマ性が、この映画のひとつの見所です。
いかがでしたでしょうか?
「四天王」や「4大公共財」と呼ばれる俳優と似た顔ぶれになるかと思ったら違いましたね。
三人に共通しているのは年代は50歳前後で、決してイケメンとかスタイルが売りではないですが、舞台演劇や監督業などの経験があり、役作りや演技にストイックな所でしょうか。
また、観客動員数1億越えした時期が、何れも2015年〜2017年に集中しているのも偶然でしょうか。
いずれにしても、皆さん「2億俳優」目指して頑張って欲しいものです。